松本零士による不朽の名作SF漫画『銀河鉄道 999』。テレビアニメや映画化もされ、世代を超えて愛され続けている作品です。しかし、この作品を初めて目にする人や、深く知らない人の中には、タイトルにある数字の羅列をどう読むべきか戸惑うケースも少なくありません。
「きゅうひゃくきゅうじゅうきゅう」なのか、「ナインナインナイン」なのか、それとも別の読み方があるのか。実はこの読み方には、作者である松本零士の深い哲学と、作品全体を貫く重要なテーマが隠されています。単なる読み方の正誤だけでなく、その背景にある意味を知ることで、作品の世界観をより深く理解することができるでしょう。
本記事では、『銀河鉄道 999』の正しい読み方と、その由来、さらに登場人物や関連用語の読み方についても詳しく解説していきます。
銀河鉄道 999 の正しい読み方とタイトルの由来
まず結論から述べると、作品タイトルの『銀河鉄道 999』の「999」は、「スリーナイン」と読むのが公式であり正解です。決して「きゅうひゃくきゅうじゅうきゅう」や「ナインナインナイン」ではありません。なぜこの読み方が定着したのか、そしてなぜ「999」という数字が選ばれたのかについて、詳細に掘り下げていきます。
「スリーナイン」と読むのが正解である理由
『銀河鉄道 999』の読み方が「スリーナイン」であることは、作品のファンにとっては常識的な知識ですが、これには明確な根拠が存在します。まず、1977年に連載が開始された当初から、ルビ(ふりがな)として「スリーナイン」が振られていました。また、テレビアニメ版のオープニングナレーションや、ゴダイゴによる大ヒット主題歌の歌詞の中でも明確に「スリーナイン」と発音されています。
英語で「999」をそのまま読む場合、「Nine hundred (and) ninety-nine」となりますが、これはあまりに長く、語呂も良くありません。また、数字を一つずつ読む「Nine nine nine」も可能ですが、作品の持つ疾走感やリズム感を表現するには「スリーナイン」という読み方が最適であったと考えられます。
この「スリーナイン」という響きは、日本語のカタカナ英語としても非常に馴染みが良く、一度聞いたら忘れられないインパクトを持っています。鉄道車両の形式番号(例:C62形蒸気機関車など)を呼ぶ際のような、機械的かつ近未来的な響きを含んでいる点も、SF作品としての雰囲気を高める要因となっています。したがって、公的な場や会話の中でこの作品に言及する際は、「ギンガテツドウ・スリーナイン」と発音するのが唯一の正解です。
「999」という数字に込められた松本零士の想い
なぜ「1000」ではなく「999」なのでしょうか。ここには作者である松本零士の強いこだわりと哲学が込められています。松本零士は生前のインタビューなどで、この数字の意味について度々言及しています。
「999」とは、「1000」という完成形の一歩手前を表しています。「1000」になれば大人になり、完成された状態を意味しますが、「999」は未完成であり、まだ終わらない青春の象徴なのです。主人公である星野鉄郎は、機械の体を求めて旅をしますが、それは未熟な少年が大人へと成長していく過程でもあります。あと「1」足せば「1000(=大人、完成)」になるけれど、今の段階ではまだ「999」である、という「未完の可能性」を示唆しているのです。
また、別の解釈として、「999」は3桁の数字の最後であり、そこから新しい桁(1000)へ移る直前という意味もあります。これは、少年時代から大人への過渡期、あるいは一つの物語の終わりと新しい物語の始まりを意味しているとも取れます。このように、「スリーナイン」という読み方とその数字の並びには、物語のテーマである「限りある命の尊さ」や「青春の終わりと始まり」が見事に表現されているのです。
誤読されやすい「キュウキュウキュウ」との違い
一般的に数字の「999」を見た際、「キュウキュウキュウ」と読んでしまうことは不自然ではありません。しかし、『銀河鉄道 999』に関しては、この読み方は明確な誤りとして扱われます。
「キュウキュウキュウ」と読んでしまった場合、それは単なる数字の羅列に過ぎず、作品固有の固有名詞としての響きが失われてしまいます。また、日本語の「苦(く)」を連想させる音の重なりでもあるため、冒険活劇としての夢やロマンを感じさせるタイトルとしては不適切であるとも言えます。
さらに、作品内に登場する他の銀河鉄道の車両番号を見てみると、111(ワンワンワン)、222(ツーツーツー)といった具合に、英語読みの繰り返しが基本ルールとなっています(一部例外や日本語読みが混在するケースもありますが、基本は英語読みベースのカタカナ表記です)。この規則性から考えても、「スリーナイン」という読み方は体系的に整合性が取れており、「キュウキュウキュウ」という日本語読みは作品の世界観から外れてしまうのです。
海外版でのタイトルと発音について
日本国内では「スリーナイン」で統一されていますが、海外で『銀河鉄道 999』が紹介される際はどのようなタイトルや発音になっているのでしょうか。
英語圏でのタイトルは『Galaxy Express 999』と表記されます。ここでの発音は、現地のアニメファンや配給会社によって若干の揺れがありますが、基本的には「Galaxy Express Three-Nine」と読まれることが多いようです。英語のネイティブ感覚では「Nine Nine Nine」と読む方が自然な場合もありますが、日本のオリジナル作品へのリスペクトや、「Three-Nine」という語呂の良さから、日本式の読み方が採用されるケースも見受けられます。
また、国によってはその国の言語に翻訳されたタイトルが付けられていますが、数字の部分に関しては原作の意図を汲んでそのまま「999」が使われることがほとんどです。世界中のファンが、この数字の並びを見て、メーテルや鉄郎の旅路を思い浮かべる共通のアイコンとなっているのです。
銀河鉄道 999 の登場人物や関連用語の読み方
『銀河鉄道 999』の世界には、独特の読み方や響きを持つ名前、用語が数多く登場します。これらは物語の神秘性やSF的な雰囲気を構築する上で欠かせない要素です。主要キャラクターやメカニックの読み方についても詳しく見ていきましょう。

メーテルや星野鉄郎など主要キャラの名前の響き
ヒロインである「メーテル」の名前は、非常に印象的で美しい響きを持っています。この名前の由来は、ギリシャ語で「母」を意味する「メーテール(Meter)」から来ていると言われています。また、ラテン語の「Mater」にも通じます。物語の中でメーテルが鉄郎に対して母親のような、あるいは聖母のような存在として描かれていることと、この名前の読み方は密接にリンクしています。英語圏では「Maetel」と綴られ、発音も日本語の「メーテル」に近い音で呼ばれます。
一方、主人公の「星野鉄郎(ほしのてつろう)」は、非常に日本的で土着的な名前です。「鉄郎」という響きには、「鉄の意志」や「鉄道」といった意味が込められていると同時に、どこにでもいそうな素朴な少年のイメージも付与されています。SF作品でありながら、主人公にこのような日本的な名前がついていることで、読者は鉄郎に親近感を抱きやすくなっています。
また、鉄郎の母を殺した機械伯爵(きかいはくしゃく)や、宇宙海賊キャプテン・ハーロック(Harlock)、クイーン・エメラルダス(Emeraldas)など、松本零士作品のキャラクター名は、カタカナ表記の響きが重視されており、その読み方そのものがキャラクターの性格や役割を象徴しています。
車掌や機関車(C62)に関する名称の読み
『銀河鉄道 999』のマスコット的存在でもある「車掌(しゃしょう)」は、作中で特定の個人名で呼ばれることはほとんどなく、単に「車掌さん」と呼ばれます。しかし、透明な体を持つ彼の存在は忘れがたいものです。
そして、999号を牽引する機関車は、実在した日本の蒸気機関車「C62形」をモデルにしています。作中では「C62」と表記され、読み方は「シロクニ」です。これは鉄道ファンの間での通称をそのまま採用したものです。「シー・ロク・ジュウ・ニ」と読むのではなく、「シロクニ」と読むことで、鉄道への愛着と専門性が表現されています。
ちなみに、999号自体はあくまで「列車」としての名称であり、それを牽引する機関車部分がC62の形をしているという設定です。この「シロクニ」という響きは、昭和の鉄道黄金期を知る人々にとっては郷愁を誘う音であり、若い世代にとってはレトロフューチャーな響きとして受け入れられています。機関室(カマ)の描写や、石炭をくべる音など、アナログな鉄道用語や読み方がSF設定の中に違和感なく溶け込んでいるのも、本作の大きな魅力です。
アルカディア号や他の松本作品との関連用語
『銀河鉄道 999』は、松本零士の他の作品と世界観を共有しています(これを「レイジバース」と呼ぶこともあります)。その中で登場する有名な宇宙戦艦が「アルカディア号」です。「Arcadia」とは「理想郷」を意味する言葉で、読み方はそのまま「アルカディア」です。
また、999号が目指す終着駅についても触れておく必要があります。テレビアニメ版では「プロメシューム」という惑星が登場します。これはギリシャ神話の「プロメテウス」に由来しており、読み方は独特の訛りを含んだ「プロメシューム」となっています。機械帝国の女王の名前も同じく「プロメシューム」であり、この読み方は絶対的な支配者としての威圧感を与えています。
その他にも、「コスモドラグーン(戦士の銃)」や「重力サーベル」など、武器やガジェットの名称も独特のカタカナ読みが採用されており、これらが作品全体のハードボイルドかつ幻想的な雰囲気を支えています。正しい読み方を知ることで、これらのアイテムや設定が持つ本来の意味やカッコよさを再認識できるはずです。
銀河鉄道 999 の読み方に関するまとめ
銀河鉄道 999 の読み方についてのまとめ
今回は銀河鉄道 999 の読み方についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・『銀河鉄道 999』のタイトルにある「999」の正しい読み方は「スリーナイン」である
・連載当初からルビが振られており、アニメや主題歌でも「スリーナイン」と統一されている
・「きゅうひゃくきゅうじゅうきゅう」や「ナインナインナイン」と読むのは誤りである
・「999」には「1000(大人・完成)」になる直前の「未完成の青春」という意味が込められている
・作者の松本零士は、終わりのない物語や少年の成長過程をこの数字に託したとされる
・海外版タイトル『Galaxy Express 999』でも、日本式の発音に近い読み方がされることが多い
・作中の他の列車番号(111、222など)も英語読みの繰り返しが基本ルールとなっている
・ヒロイン「メーテル」の名はギリシャ語やラテン語の「母」に由来する響きを持つ
・主人公「星野鉄郎」の名は、親しみやすさと「鉄」の意志を象徴する日本的な読みである
・機関車「C62」は鉄道ファン用語である「シロクニ」という読み方が採用されている
・「プロメシューム」など関連用語の読み方も、神話や独自の音韻をベースにしている
・正しい読み方を知ることは、作品のテーマや松本零士の哲学を深く理解することにつながる
『銀河鉄道 999』は単なるSFアドベンチャーではなく、そのタイトルや名前に深い意味が込められた文学的な作品でもあります。 「スリーナイン」という読み方に込められた「未完の青春」というメッセージを噛みしめながら、改めて作品に触れてみてはいかがでしょうか。 きっと、以前とは違った感動や発見があるはずです。
記事の最後に、実際に歌詞の中で力強く「スリーナイン」と歌われている、ゴダイゴによる不朽の名曲をご紹介します。


