空中にゴロゴロと実るユニークな姿から「宇宙芋(うちゅういも)」と呼ばれる不思議な野菜。別名「エアーポテト」とも呼ばれ、家庭菜園などで人気を集めていますが、その見た目から「食べられるのか?」「もしかして毒があるのでは?」と不安に思う方も少なくないようです。
実際のところ、宇宙芋に毒性はあるのでしょうか。また、もし毒があるなら、どの部分に注意すべきなのでしょうか。
この記事では、「宇宙芋」と「毒」というキーワードに焦点を当て、その安全性、毒性を持つ近縁種との違い、そして安心して楽しむための正しい食べ方について、幅広く調査した結果をお届けします。
宇宙芋の毒性に関する基本情報
まず、私たちが「宇宙芋」と呼んでいるものの正体と、毒性の有無に関する基本的な情報を整理します。
宇宙芋(エアーポテト)とは?その正体と特徴
一般に「宇宙芋」や「エアーポテト」という名前で流通しているものは、熱帯アジア原産のヤマノイモ科ヤマノイモ属の植物です。和名を「カシュウイモ(何首烏芋)」と言い、学術的には Dioscorea bulbifera var. sativa という「栽培品種」にあたります。
私たちが主に食用にしているのは、ジャガイモのような地中の「芋(いも)」ではなく、蔓(つる)の葉の付け根(葉腋)にできる「むかご(零余子)」の部分です。このむかごが、通常のヤマノイモのむかごとは比べ物にならないほど大きく(大きいものでは数百グラム)成長し、その見た目が隕石や宇宙の惑星を思わせることから「宇宙芋」と呼ばれるようになりました。
注意すべきは野生種「ニガカシュウ」の毒
宇宙芋に「毒がある」という情報が広まった背景には、この食用の宇宙芋(カシュウイモ)の「原種」にあたる野生種の存在があります。
宇宙芋の原種は「ニガカシュウ(苦何首烏)」(学名:Dioscorea bulbifera)と呼ばれ、こちらは毒性を持っています。
ニガカシュウには、ステロイドの一種である「ジオスゲニン」などの有毒成分が含まれており、食べると非常に強い苦味を感じます。野生のものを誤って食べないよう、十分な注意が必要です。
宇宙芋(栽培種)の「むかご」と「芋」の毒性
では、私たちが食用として栽培・購入する宇宙芋(カシュウイモ)に毒はないのでしょうか。
- むかご(宇宙芋)食用の栽培品種である宇宙芋の「むかご」には、毒性はない、あるいは極めて低いとされています。ただし、ヤマノイモ科の植物に共通する「アク」を多く含んでいます。そのため、生食するとえぐみや苦味、青臭さを感じることがあり、一般的に生食は推奨されていません。
- 地中の「芋」(カシュウイモ)宇宙芋(カシュウイモ)は、地中にも芋(地下茎)を作ります。この地中の芋も食用になります。ただし、むかごを大きく実らせるように品種改良されているため、地中の芋はあまり大きくならない傾向があります。東南アジアなどでは非常食として利用されていた歴史もあり、市場には出回りにくい珍味として扱われることもあります。こちらも「むかご」同様、アクが強いため生食はせず、加熱調理が必要です。
宇宙芋(食用)とニガカシュウ(有毒)の見分け方
万が一、野生のものを目にした場合、食用の宇宙芋と有毒のニガカシュウを見分けることが重要です。
| 比較項目 | 宇宙芋(食用・カシュウイモ) | ニガカシュウ(有毒・野生種) |
| むかご | 表面が比較的滑らか | 表面がデコボコ、ゴツゴツしている |
| 葉の形 | 細長いハート型(ヤマノイモに似る) | 幅広くふっくらしたハート型 |
| 葉の付き方 | 対生(ついせい・左右対称)が多い | 互生(ごせい・互い違い) |
| 葉柄 | 特徴的なひだは無い | 葉の付け根の柄に「びらびらした翼(ひだ)」がある |
| 味 | (アク抜き前は苦味・えぐみ) | 非常に強い苦味(毒) |
宇宙芋の毒に関する安全な取り扱いと食べ方
食用の宇宙芋には毒性がない(または極めて低い)ことが分かりましたが、安全においしく食べるためにはいくつかの重要なポイントがあります。
生食は危険?必ず加熱調理を
宇宙芋(むかご・芋ともに)は、生食を避けてください。
毒性がないとはいえ、アクが非常に強いため、生で食べるとえぐみや苦味で美味しくないだけでなく、体質によっては腹痛や不調を引き起こす可能性も否定できません。
また、ジャガイモの生食が推奨されないのと同様に、デンプン質が消化されにくいという側面もあります。必ず中心部までしっかりと火を通してから食べることが原則です。
下ごしらえの鍵は「アク抜き」
宇宙芋をおいしく食べるための最大のコツは「アク抜き」です。アクは特に皮の近くに多く含まれています。
- 皮をむくゴツゴツした皮をピーラーや包丁でむきます。アクが気になる場合は、皮のすぐ下にある緑色の部分がなくなるまで、少し厚めにむくと良いでしょう。
- 水にさらす適当な大きさにカットした後、すぐに水にさらします。10分〜15分ほど水にさらすか、酢水につけると、変色を防ぎ、えぐみを和らげることができます。
すりおろし(とろろ)は可能か?
宇宙芋はヤマノイモの仲間であるため、すりおろすと強い粘り気が出ます。とろろのように利用することも不可能ではありません。
ただし、アクが強いため、すりおろした瞬間に空気に触れて茶色く(黄土色に)褐変します。見た目が悪くなるため、白いとろろご飯のような食べ方には向きません。お好み焼きの生地に混ぜ込むなど、加熱する料理に使うのが現実的です。
おすすめの加熱調理法
アク抜きと加熱さえしっかり行えば、宇宙芋は非常に versatile(多用途)な食材です。食感はジャガイモと里芋の中間、あるいは「ホクホク感が強い山芋」と表現されます。
- 蒸す・茹でる:シンプルに蒸したり茹でたりして、塩やバターで食べる。ホクホクした食感をダイレクトに楽しめます。
- 揚げる:フライドポテトや唐揚げ、天ぷらにすると、外はカリッと、中はホクホクに仕上がります。
- 煮る:煮崩れしにくい性質があるため、煮物や煮っ転がし、味噌汁、シチュー、カレーの具材にも最適です。
- 炒める:拍子木切りにして、ベーコンやキノコと一緒に炒め物に。
- 炊き込みご飯:小さめにカットして、むかご飯と同じ要領で炊き込みご飯にするのも定番です。
宇宙芋の毒に関する情報のまとめ
最後に、宇宙芋の毒性に関する情報を総括します。
宇宙芋の毒についての総括
今回は宇宙芋の毒性についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・一般に「宇宙芋」として流通するものは栽培品種「カシュウイモ」の「むかご」である
・食用の宇宙芋(むかご・地中の芋)に毒性はないか極めて低い
・生食はアクが強く(えぐみ・苦味)、消化に悪いため推奨されない
・毒性があるのは原種の「ニガカシュウ」(野生種)である
・ニガカシュウは「むかごがゴツゴツ」「葉が幅広」「葉柄にひだ」などの特徴で見分けられる
・宇宙芋は必ず加熱調理して食べる
・皮をむき、水や酢水にさらして「アク抜き」をすることが推奨される
・アク抜きをすれば、ジャガイモや里芋のように様々な料理に活用できる
・すりおろすと粘りが出るが、すぐに褐変するため生食には向かない
・地中にも芋ができ、こちらも加熱すれば食用になる
結論として、私たちが「宇宙芋」として手に入れる栽培品種には、適切に調理(加熱・アク抜き)する限り、毒性の心配はありません。そのユニークな見た目と、ホクホクとしたおいしさを、ぜひ様々な料理で楽しんでみてください。

