近年、宇宙ビジネスへの関心が高まる中、「宇宙水道局」というキーワードが注目を集めています。この名称から、月や火星での水資源開発を想像する方も多いかもしれません。しかし、「宇宙水道局の株価」を調査すると、全く異なる、しかし非常に重要なビジネスモデルが浮かび上がってきます。
「宇宙水道局」とは、実は宇宙(衛星データ)を活用して、私たち地球上の水道インフラが抱える深刻な問題を解決するサービスの名称です。この革新的なサービスを提供しているのが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)認定ベンチャーである「株式会社天地人(てんちじん)」です。
では、この「宇宙水道局」を提供する株式会社天地人の株価は現在どうなっているのでしょうか。また、同社はどのような企業で、どれほどの将来性を秘めているのでしょうか。
この記事では、「宇宙水道局の株価」というキーワードを入り口に、株式会社天地人の詳細、同社が推進するインフラDX(デジタルトランスフォーメーション)の現状、そしてIPO(新規株式公開)の可能性、さらには関連する衛星データビジネス市場や上場企業に至るまで、客観的な情報に基づき幅広く調査・解説します。
宇宙水道局とは?株式会社天地人の革新的サービスを徹底解剖
「宇宙水道局」という名称は、宇宙開発を連想させますが、その実態は地球の社会課題を解決するための最先端技術です。まずは、このサービスが何であり、なぜ今、社会から強く求められているのかを深掘りします。
「宇宙水道局」の概要と仕組み
「宇宙水道局」は、株式会社天地人が開発・提供する「天地人コンパス 宇宙水道局」というクラウドサービスの通称です。これは、人工衛星から得られる膨大な「宇宙ビッグデータ」とAI(人工知能)を駆使して、地球上の水道管がどこで漏水しやすいかを予測・管理するシステムです。
従来の漏水調査は、専門の作業員が「音聴棒(おんちょうぼう)」と呼ばれる器具で地面の音を聞き分けたり、相関式漏水発見器を使用したりするなど、多くの時間、コスト、そして熟練の技術を要するものでした。
「宇宙水道局」は、このプロセスを根本から変革します。具体的には、以下のような多種多様なデータをAIに学習させ、漏水リスクを地図上に可視化します。
- 衛星データ: 地表面の温度、降水量、土地被覆(森林、市街地など)、地盤の微小な変動(SAR衛星による観測)など。
- 地上データ: 各自治体が管理する管路情報(材質、布設年数、口径)、過去の漏水履歴、土壌の種類など。
これらのデータをAIが統合的に解析し、「このエリアのこの管は、近い将来漏水する可能性が○%」といった形で、リスクの高い順に優先順位付けを行います。これにより、自治体の水道局は、限られたリソース(予算や人員)を最も効率的に配分し、予防保全的な維持管理(壊れる前に直す)を実現できるようになります。
なぜ今、水道インフラDXが必要なのか
「宇宙水道局」が急速に普及している背景には、日本の水道事業が直面する待ったなしの危機があります。
第一に、水道管の深刻な老朽化です。日本の水道管の多くは、高度経済成長期に集中的に整備されました。その法定耐用年数は40年とされていますが、国土交通省のデータによれば、全国の水道管(基幹管路)のうち、法定耐用年数を超えた管路の割合は年々増加しており、近い将来、膨大な量の管路が更新時期を迎えます。
第二に、水道事業の経営難です。人口減少に伴う水需要の減少と料金収入の低迷、さらに熟練技術者の高齢化と人材不足が、全国の多くの自治体で深刻化しています。老朽化した管路をすべて更新するには莫大な費用が必要ですが、その財源確保が追いついていないのが実情です。
漏水は、貴重な水資源を失うだけでなく、道路の陥没事故を引き起こす原因ともなります。従来の非効率な維持管理では、この複合的な危機を乗り越えることは困難です。「宇宙水道局」のような衛星データとAIを活用したインフラDXは、水道事業の持続可能性を担保するための切り札として期待されているのです。
導入実績と社会実装の進展
「宇宙水道局」は、すでに多くの自治体で導入が進んでいます。栃木市、高崎市、静岡市、佐賀市など、2025年9月の時点で累計契約自治体数は50を突破したと報告されています。
その効果も具体的に示されており、ある実証実験では、従来の調査方法と比較して点検費用が最大65%削減され、調査期間が最大85%削減されたという結果も出ています。これは、水道事業のコスト構造を劇的に改善する可能性を示しています。
さらに、天地人は国内の自治体だけでなく、企業連携や海外展開も加速させています。例えば、株式会社アイシンの道路維持管理サービス「みちログ」と連携し、静岡県磐田市で道路と水道管の漏水相関関係を分析する実証実験も行われました。
また、2025年9月には、インドの大手水インフラ企業であるSwach Environment社とMOU(基本合意書)を締結し、インド国内での概念実証(PoC)を目指すなど、その技術は国境を越えようとしています。
天地人のコア技術「天地人コンパス」
「宇宙水道局」は、株式会社天地人が持つコア技術「天地人コンパス」というプラットフォーム上で提供されるサービスの一つです。
「天地人コンパス」は、衛星データを含む様々なビッグデータを集約し、AIで解析・可視化することで、土地の価値や可能性を評価するための基盤システムです。天地人はJAXAの職員(当時)の知見を活かして設立されたJAXA認定ベンチャーであり、その技術力には高い信頼が寄せられています。
「宇宙水道局」以外にも、天地人コンパスは以下のような多様な分野で活用されています。
- 農業分野: 衛星データから最適な栽培適地を探す、作物の生育状況を管理する。
- エネルギー分野: 風力発電や太陽光発電の最適な設置場所を選定する。
- 環境分野: 水田から発生するメタンガスの排出量を推定する。
- 防災分野: 浸水リスクや土砂災害リスクを評価する。
このように、「宇宙水道局」は、天地人が持つ広範な宇宙ビッグデータ解析技術が、水道インフラという具体的な社会課題に応用された、極めて戦略的なサービスであると言えます。
宇宙水道局の「株価」は?株式会社天地人のIPOと将来性
サービスの革新性や社会貢献度、そして急速な事業拡大を知ると、次に投資家として気になるのは「宇宙水道局の株価」、すなわち株式会社天地人の企業価値と上場の可能性です。
現状の株価:株式会社天地人は「未上場」
まず、2025年11月現在の結論から言うと、株式会社天地人は「未上場」企業です。
東京証券取引所(プライム、スタンダード、グロース)など、国内のどの証券取引所にも上場していません。そのため、一般の個人投資家が証券会社を通じて同社の株式を売買することはできず、市場で形成される「株価」も存在しません。
同社は2019年設立のスタートアップ(ベンチャー企業)であり、現在は事業を急速に成長させるフェーズ(段階)にあります。この段階では、株式は創業者や経営陣、そして同社の将来性に期待して出資を行ったベンチャーキャピタル(VC)や事業会社などが保有しているのが一般的です。
IPO(新規株式公開)の最新動向
では、株式会社天地人が上場する可能性はないのでしょうか。その答えは「ノー」であり、むしろ積極的に上場を目指していることが複数の情報源から確認されています。
最も注目すべきは、2025年10月17日付の日本経済新聞による報道です。この記事では、天地人が新規株式公開(IPO)の準備を開始したことが報じられています。
また、転職サイトdodaに掲載された同社の求人情報(2025年8月更新)においても、「IPOを目指す宇宙ベンチャー」と明記されており、社内体制の構築も含めて上場に向けた準備が本格化していることが伺えます。
IPOの目的は、一般に事業拡大のための大規模な資金調達、社会的信用の獲得、そして優秀な人材の確保などにあります。天地人が目指す「宇宙水道局」の海外展開や、「天地人コンパス」の多角化には継続的な投資が必要であり、IPOはその強力な推進力となります。
ただし、IPO準備の開始が報じられたからといって、すぐに上場が実現するわけではありません。証券会社による審査や東京証券取引所による上場審査など、多くのプロセスを経る必要があり、具体的な上場時期や想定される時価総額(企業価値)については、現時点では断定できません。
資金調達の歩みと主要株主
天地人が未上場ながらも急速に事業を拡大できている背景には、その将来性を高く評価した機関投資家からの順調な資金調達があります。
- 2022年12月: JAXA(宇宙航空研究開発機構)から、法改正後初となる直接出資を受けました。これは、JAXAが天地人の技術力と事業を「お墨付き」として認めたことを意味し、大きなマイルストーンとなりました。
- 2024年1月: シリーズAラウンドとして、DBJ(株式会社日本政策投資銀行)をリード投資家とし、スカパーJSAT株式会社などから総額2.5億円を調達しました。政府系金融機関であるDBJの出資は、事業の公共性や信頼性をさらに高めるものです。また、衛星通信の雄であるスカパーJSATとは資本業務提携も結んでおり、事業面でのシナジー(相乗効果)も期待されます。
- 2025年9月: シリーズBラウンドとして、Frontier Innovations株式会社やインクルージョン・ジャパン株式会社などをリード投資家として、約7億円の資金調達を実施しました。
このように、JAXA、政府系金融機関、大手事業会社、そして複数のベンチャーキャピタルという多様な株主構成は、天地人の事業が持つ「技術力」「公共性」「市場性」「成長性」のすべてが評価されている証左と言えます。
天地人の将来性と成長戦略
「宇宙水道局の株価」はまだ存在しませんが、仮に同社がIPOを果たした場合、その企業価値(時価総額)はどのような要因によって評価されるのでしょうか。
- 国内インフラDX市場の深耕:「宇宙水道局」の国内導入自治体は50を超えましたが、日本の水道事業体は1,000以上存在します。この巨大な国内市場でのシェアをどれだけ拡大できるかが、当面の成長を左右します。
- 海外展開の成否:水道インフラの老朽化や水資源管理は、日本だけでなく、特にアジアをはじめとする世界共通の課題です。すでに着手しているインド市場での成功は、グローバル展開の試金石となります。
- 「天地人コンパス」による多角化:天地人の強みは、特定のサービスに依存せず、「天地人コンパス」という強力なプラットフォームを持っている点です。農業、再生可能エネルギー、防災、保険など、衛星データが価値を生む領域は無限に存在します。これらの分野で「第二、第三の宇宙水道局」を生み出せるかが、長期的な成長の鍵となります。
- 政府の宇宙政策との連動:日本政府は宇宙産業を成長戦略の柱の一つと位置づけ、「宇宙基本計画」や「JAXA戦略宇宙基金」などを通じてスタートアップ支援を強化しています。この強力な追い風を最大限に活用できるかも重要です。
宇宙水道局の株価が動く前に関連市場を調査
株式会社天地人は未上場であるため、現時点で「宇宙水道局の株価」に直接投資することはできません。しかし、天地人が属する「衛星データ活用サービス市場」はすでに確立された市場であり、そこには多くのプレイヤーが存在します。
天地人のIPOを待つ間、この関連市場の動向や、類似するビジネスモデルを持つ上場企業を調査することは、未来の「宇宙水道局の株価」を占う上で非常に有益です。
成長する衛星データ活用市場の規模
衛星データ活用サービス市場は、国内外で著しい成長を遂げています。
- 国内市場:矢野経済研究所の調査(2025年5月発表)によれば、2023年度の国内衛星データ活用サービス市場は182億円(前年度比13.0%増)と推計されています。JAXA戦略宇宙基金などに牽引される形でPoC(概念実証)が進展しており、市場は高伸長を継続。2030年度には340億円規模に達すると予測されています。
- グローバル市場:Fortune Business Insightsの調査(2025年10月発表)では、世界の衛星データサービス市場規模は2024年の52.5億米ドルから、2032年には122.88億米ドルに拡大すると予測されており、年平均成長率(CAGR)は11.22%と非常に高い水準です。
この市場成長の背景には、衛星の小型化による打ち上げコストの低下、観測精度の向上、そしてAI解析技術の進化があります。天地人の「宇宙水道局」は、まさにこの高成長市場のど真ん中に位置するサービスです。
関連上場企業①:衛星データ解析・AI
天地人と同様に、衛星データとAI解析を強みとする上場企業も存在します。
Ridge-i(リッジアイ) <5572> (東証グロース)
Ridge-iは、AI・ディープラーニング技術に強みを持つ企業で、衛星データ解析市場にも本格的に参入しています。特にSAR(合成開口レーダー)衛星の画像解析に定評があり、モーリシャス沖での重油流出事故の際に、流出範囲を迅速に特定して被害拡大防止に貢献した実績などで知られます。天地人がSaaSプラットフォーム提供を主軸とするのに対し、Ridge-iは高度なAI解析技術を用いたソリューション提供に強みがある点で比較されます。
関連上場企業②:空間情報・インフラ管理
衛星データ活用は、古くから測量や地図作成の分野で利用されてきました。この分野の老舗企業も、インフラ管理DXの関連プレイヤーです。
パスコ <9232> (東証プライム)
パスコは、空間情報サービスの国内最大手企業です。航空測量や地上測量に強みを持ち、売上の約8割が官公庁・公共団体向けで、国土強靭化や防災・減災関連の業務を安定的に受注しています。同社もJAXAなど国内外のSAR衛星画像を多数取り扱っており、インフラ維持管理や災害対応ソリューションを提供しています。天地人が衛星データ主体のスタートアップであるのに対し、パスコは地上測量も含めた総合的な空間情報サービスを提供する老舗企業という点で、インフラDX市場における立ち位置が異なります。
関連上場企業③:宇宙ベンチャーセクター
「宇宙水道局」は地球上の課題解決型ビジネスですが、同じ「宇宙ビジネス」というセクターには、宇宙空間での活動を目指すベンチャー企業も続々と上場しています。
- ispace(アイスペース) <9348> (東証グロース): 月面探査ローバーや着陸船を開発する、民間月面探査のパイオニア。
- QPS研究所 <5595> (東証グロース): 高精細・高頻度観測が可能な小型SAR衛星コンステレーションの構築を目指す。
- アストロスケールホールディングス <186A> (東証グロース): スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去サービスという、宇宙の環境問題に取り組む。
これらの企業は、天地人とは事業領域が異なりますが、宇宙ビジネスセクター全体の市場評価や投資家の関心を測る上で、その株価動向は重要な指標となります。
宇宙水道局の株価と天地人の将来性まとめ
「宇宙水道局の株価」というキーワードの調査は、単なる株価情報の検索に留まらず、日本の社会課題と宇宙ビジネスの最前線を浮き彫りにする結果となりました。
宇宙水道局の株価に関連する調査のまとめ
今回は宇宙水道局の株価についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・「宇宙水道局」は株式会社天地人が提供するサービス名
・天地人は衛星データを活用し水道管の漏水リスクを管理するシステムを提供
・株式会社天地人は2025年11月現在「未上場」である
・未上場のため証券取引所における「株価」は存在しない
・天地人は2025年10月にIPO(新規株式公開)の準備を開始したと報道された
・天地人はJAXAから初の出資を受けたJAXA認定ベンチャーである
・シリーズBまでにJAXA、DBJ、スカパーJSATなどから資金調達を実施
・「宇宙水道局」は日本国内の50以上の自治体で導入されている
・天地人はインドなど海外市場への展開も進めている
・衛星データ活用サービス市場は国内外で高成長が予測されている
・日本政府も宇宙産業市場の倍増を目指し支援を強化している
・類似の衛星データ解析AI事業を行う上場企業にRidge-i(5572)がある
・空間情報サービスの老舗としてパスコ(9232)も関連上場企業である
・ispace(9348)やQPS研究所(5595)など他の宇宙ベンチャーも上場している
・天地人への投資はIPOが実現するまで一般投資家には困難
「宇宙水道局の株価」を調査した結果、現在は未上場であることが判明しました。
しかし、JAXAや政府系金融機関の支援を受け、国内外で急速に事業を拡大しており、IPOに向けた準備も開始されています。
今後、株式会社天地人が上場すれば、衛星データ×インフラDXの注目銘柄として、大きな話題を集めることになりそうですね。

