1960年代の終わり、日本のお茶の間に登場したユニークな海外アニメ「宇宙忍者ゴームズ」。マーベル・コミックスの金字塔「ファンタスティック・フォー」を原作としながらも、その独特すぎる邦題とキャラクター名、そして豪華すぎる声優陣の起用によって、今なおカルト的な人気を誇る作品です。
「懐かしいあの作品をもう一度見たい」「日本語吹き替え版をDVDで楽しみたい」と考えるファンは少なくありません。しかし、そのDVDの入手は一筋縄ではいかないのが現状です。
この記事では、「宇宙忍者ゴームズ」のDVDリリース状況を中心に、作品の基本的な情報、その魅力、そしてDVDが入手困難な場合の代替手段について、幅広く徹底的に調査・解説していきます。
宇宙忍者ゴームズのDVDリリース状況を徹底調査
長年ファンが待ち望んでいる「宇宙忍者ゴームズ」のDVDですが、そのリリース状況は非常に特殊なものとなっています。まずは、作品の基本情報から、日本国内と海外でのDVD化の現状について詳しく見ていきましょう。
「宇宙忍者ゴームズ」とは?作品の基本情報
「宇宙忍者ゴームズ」(原題:Fantastic Four)は、アメリカのマーベル・コミックスが誇るスーパーヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」を原作としたテレビアニメシリーズです。
制作と放送の歴史
本作は、1967年にアメリカのABCネットワークで放送が開始されました。「チキチキマシン猛レース」や「原始家族フリントストーン」などで知られる、アメリカを代表するアニメーションスタジオ「ハンナ・バーベラ・プロダクション」によって制作されました。キャラクターデザインには、カートゥーン界の巨匠アレックス・トスが参加しており、そのシャープでスタイリッシュなデザインは今なお高い評価を受けています。
全20話が制作され、スタン・リーとジャック・カービーによる原作コミックの初期のストーリーラインを比較的忠実にアニメ化した内容となっています。ドクター・ドゥームやモグラ怪人(モールマン)、ギャラクタス、シルバーサーフィンといった、原作でもおなじみのヴィラン(悪役)たちが多数登場しました。
日本での放送と衝撃の邦題
日本国内では、1969年(昭和44年)8月から12月にかけて、NETテレビ(現:テレビ朝日)系列で放送されました。
日本での放送に際して付けられたのが、「宇宙忍者ゴームズ」という非常にインパクトのある邦題です。
原作では天才科学者であるリーダーのリード・リチャーズは「ゴームズ」と名付けられました。なぜ「忍者」なのかについては諸説ありますが、当時日本で「忍者」ブームがあったことや、先行して放送されていたハンナ・バーベラ作品「宇宙怪人ゴースト」(原題:Space Ghost)の成功を受け、「宇宙〇〇」というキャッチーなネーミングが採用されたのではないかと推測されています。
体がゴムのように伸縮自在(Stretching)であることから「ゴームズ」と名付けられたとされていますが、その由来のユニークさも含め、当時の日本のテレビ局がいかにローカライズに力を入れていたかがうかがえます。
日本国内でのDVD化は実現しているか?
結論から申し上げますと、2025年現在、「宇宙忍者ゴームズ」の日本語吹き替え版を収録した日本国内向けの正規DVDやBlu-rayは、公式には一切発売されていません。
これは、長年にわたりファンが熱望しているにもかかわらず、実現していない状況です。過去にVHS(ビデオテープ)やLD(レーザーディスク)でコンプリートボックスが発売されたという記録も、商業ベースでは確認されていません。
そのため、現在「宇宙忍者ゴームズ」の日本語版を視聴することは極めて困難な状況となっています。ファンがこの作品に再び触れることを望む声は多いものの、権利関係の複雑さや、後述する日本語版マスター音源の所在不明などが、日本での正規ソフト化を阻む大きな壁となっていると考えられます。
海外版DVDの存在と仕様
日本国内では絶望的な状況ですが、海外ではどうでしょうか。
調査したところ、原作名である「Fantastic Four: The Complete 1967 Cartoon Series」といったタイトルで、全20話を収録したとされるDVDセットが海外のオンラインマーケットなどで流通していることが確認できました。
これらの海外版DVDには、以下のような特徴があります。
- 全20話収録: オリジナル放送分をすべて網羅しているとうたわれています。
- 音声・字幕: 基本的に「英語音声」のみであり、「日本語字幕」や待望の「日本語吹き替え音声」は収録されていません。
- リージョンコード: 北米(アメリカ・カナダ)向けの「リージョン1」である可能性が高いです。日本のDVDプレーヤー(リージョン2)では原則として再生できません。(ただし、後述する「リージョンフリー」の商品も存在します)
海外版DVD:市場の現状と、購入してはいけない理由
海外のAmazonやeBay、Etsyといったオンライン通販サイト、あるいはレトロ作品を扱う一部のショップなどで、これらのDVDセットが販売されているのを見かけることがあります。
「どうしても映像が見たい」というファン心理としては魅力的に映るかもしれません。しかし、これらの商品に安易に手を出すことは推奨できません。 そこには商品としての品質問題だけでなく、法的なリスクも潜んでいるからです。
購入を検討する前に、以下の重大なリスクを必ず理解してください。
1. 「海賊版(ブートレグ)」である可能性と、輸入没収のリスク
最も警戒すべき点は、これらがマーベルやハンナ・バーベラといった権利元から正式にライセンスを受けていない「非公式の海賊版(違法コピー品)」である可能性が極めて高いということです。
販売ページに「Not a commercial release(商業リリース品ではない)」「Public Domain(パブリックドメイン・著作権切れ)」といった記述や、個人制作の「ファンリリース」であることを示唆する説明がある場合は特に注意が必要です。
これらは「グレーゾーン」ではありません。以下の理由から、明確なリスクが存在します。
- 税関での没収対象(2022年法改正): かつては「個人使用目的」であれば輸入が見過ごされるケースもありましたが、2022年の法改正により、海外からの模倣品・海賊版の輸入は、個人使用目的であっても税関での没収(輸入差止)対象となりました。 「注文したのに税関で止められて届かない」「代金だけ失う」という事態になる可能性が高いです。
- 著作権侵害への加担: 海賊版の購入は、クリエイターや権利元に利益が還元されないだけでなく、違法な業者の資金源になってしまいます。
2. 品質・再生環境の問題
仮に商品が届いたとしても、海賊版には品質保証がありません。
- 劣悪な画質・音質: 「HD画質」をうたっていても、実際は古いテレビ放送の録画やVHSから無理やりデータを起こした粗悪な画質であるケースが大半です。
- 再生トラブル: ディスクのプレス不良により、再生できない、途中で止まるといった報告も多く見られます。
- リージョンコードの罠: 「Region Free」「Region 0」と記載されている場合、一見便利に見えますが、これは正規の北米版(通常はRegion 1)ではなく、海賊版であることの裏付けであることが多いです。
結論
これらの海外版DVDは、ファンが求めている「日本語吹き替え版(宇宙忍者ゴームズ)」が含まれていないだけでなく、法的な問題やトラブルに巻き込まれるリスクが高い商品です。
見かけたとしても購入は控え、公式な配信や正規の復刻を待つことが、最も安全で作品のためになる応援方法と言えるでしょう。
「宇宙忍者ゴームズ」DVDが入手困難な場合の代替手段と作品の魅力
正規DVDの入手が絶望的な「宇宙忍者ゴームズ」。では、私たちはもうあのユニークな世界観に触れることはできないのでしょうか。DVD以外の視聴方法の可能性と、今なお人々を引き付ける作品の魅力について深掘りします。
DVD以外の視聴プラットフォーム:現状の壁
動画配信サービスでの状況
現在、多くのマーベル作品は公式動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」で見ることができます。しかし、2025年現在、「宇宙忍者ゴームズ」(1967年版 Fantastic Four)に関しては、ディズニープラスをはじめ、Netflix、Amazon Prime Video、Huluなどの国内主要サービスでは一切配信されていません。
これには、いくつかの複雑な事情が絡み合っていると考えられます。
- 権利関係の複雑さ: 本作はマーベル原作ですが、アニメーション制作はハンナ・バーベラ・プロダクション(現在はワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下)が行いました。「ディズニー(マーベル)」と「ワーナー」という異なる巨大企業の権利が混在しているため、配信の調整が難航している可能性があります。
- 日本語版マスター音源の消失問題: 日本国内での復刻を阻む最大の要因と推測されるのが、「日本語吹き替え版のマスター素材」の行方です。当時の放送局(NET)などが保有していたフィルムや音源テープが、現在も良好な状態で保存されている保証はありません。 もしマスター音源が散逸・劣化してしまっている場合、公式な配信やソフト化は物理的に不可能に近い状態となります。
動画共有サイト(YouTube等)について
YouTubeなどの動画共有サイトにおいて、本作のオープニングや断片的な映像がアップロードされているのを見かけることがあります。
しかし、これらは権利元であるディズニーやワーナーの許諾を得ていない「違法アップロード動画」である可能性が極めて高いです。
違法にアップロードされた動画を視聴することは、公式な権利者に利益が還元されないばかりか、将来的な正規リリース(復刻や配信)の可能性をさらに遠ざけてしまうことにも繋がりかねません。 貴重な作品だからこそ、違法な手段に頼るのではなく、公式からの正規な供給を待つ、あるいはリクエストを送るといった形での応援が望まれます。
「宇宙忍者ゴームズ」のユニークな魅力と特徴
なぜ、これほどまでに視聴困難な作品が、今もなお語り継がれているのでしょうか。その最大の理由は、他でもない日本独自のローカライズ戦略にあります。
1. 衝撃的なネーミングセンス
本作の魅力は、その独特すぎるキャラクター名に集約されます。
| 日本語名 | 原作名(英語) | 概要 |
| ゴームズ | ミスター・ファンタスティック(リード・リチャーズ) | チームのリーダー。体がゴムのように伸びる天才科学者。 |
| スージー | インビジブル・ガール(スー・ストーム) | ゴームズの妻(当時は恋人設定)。体を透明にできる。 |
| ファイヤーボーイ | ヒューマン・トーチ(ジョニー・ストーム) | スージーの弟。全身を発火させ空を飛ぶ。 |
| ガンロック | ザ・シング(ベン・グリ Grimm) | 怪力と岩のような皮膚を持つパイロット。 |
| 悪魔博士 | ドクター・ドゥーム(ヴィクター・ヴァン・ドゥーム) | 宿敵。原作ではラトヴェリア国王。本作では「アチャラカ国の出身」。 |
| モグラ怪人 | モールマン | 地底を支配しようと企むヴィラン。 |
| ボロボロ | ディアブロ | 錬金術を操るヴィラン。 |
| ハゲチャビーン博士 | レッド・ゴースト | 猿を操るヴィラン。 |
| ウツクシー | レディ・ドーマ | アトランティスの住人。 |
これらの名前は、原作の設定を大胆に無視、あるいは独自解釈したものであり、一度聞いたら忘れられない強烈なインパクトを残しました。
2. アレックス・トスによるデザインと原作準拠の物語
ユニークな邦題とは裏腹に、アニメーション本編はアレックス・トスの洗練されたデザインと、ハンナ・バーベラならではの安定した(リミテッドながらも味のある)作画で描かれています。
ストーリーも、当時のマーベル・コミック(スタン・リー&ジャック・カービー期)の展開を比較的忠実に追っており、シルバーサーフィンやギャラクタスといったコズミックな存在の登場エピソードなど、原作ファンにとっても見応えのある内容が含まれています。
豪華絢爛な日本語版声優陣
「宇宙忍者ゴームズ」のカルト的人気を決定づけた最大の要因は、その豪華すぎる、そして異色すぎる日本語吹き替えキャストにあります。
- ゴームズ(小林修)洋画吹き替えのレジェンド。チャールズ・ブロンソンやジョン・ウェインの声を担当したことで知られる小林修氏が、真面目なリーダー・ゴームズを重厚に演じました。
- スージー(増山江威子)「ルパン三世」の峰不二子(2代目)や「キューティーハニー」のハニー役で知られる増山江威子氏が、チームの紅一点を魅力的に演じました。
- ファイヤーボーイ(前川功人)詳細なキャリアは不明ですが、当時の若手声優が熱血漢のファイヤーボーイを担当しました。(※情報源により「朝戸鉄也」氏とするものもありますが、ここでは調査結果に基づき前川功人氏としています)
- ガンロック(関敬六)本作の「主役」とも言えるのがガンロック。演じたのは、コメディアン「浅草の喜劇王」としても知られる関敬六氏です。彼のアドリブとされる「ムッシュムラムラ」というセリフは当時の流行語にもなり、作品の知名度を一気に押し上げました。
- 悪魔博士(南利明)宿敵ドクター・ドゥームこと悪魔博士を演じたのも、コメディアン(「脱線トリオ」のメンバー)であった南利明氏です。その甲高い独特の声は、シリアスなはずの宿敵に強烈な個性を与えました。
- その他のヴィラン(敵役)さらに驚くべきことに、他のヴィランにも当時の人気コメディアンや個性派俳優が多数起用されました。
- レッドワル(クロウ)役:大泉滉
- ハゲチャビーン博士役:相模太郎
- ボロボロ(ディアブロ)役:トニー谷
- モグラ怪人役:谷幹一
このように、声優だけでなく当代一流のコメディアンたちを積極的に起用するというキャスティング戦略が、「宇宙忍者ゴームズ」を単なるアメコミアニメではなく、日本のテレビ史に残る「珍作」としてファンの記憶に刻み込むことになったのです。この豪華な「声の共演」を聴きたいがために、日本語版DVDの発売が熱望され続けています。
宇宙忍者ゴームズのDVD情報に関する総まとめ
「宇宙忍者ゴームズ」のDVDに関する調査結果は、ファンにとっては厳しい現実と、それでもなお作品が愛され続ける理由を浮き彫りにするものでした。
宇宙忍者ゴームズのDVDに関する調査まとめ
今回は「宇宙忍者ゴームズ」のDVDについてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・「宇宙忍者ゴームズ」は1967年米国制作の「ファンタスティック・フォー」のアニメ
・日本では1969年にNET(現:テレビ朝日)で放送された
・「ゴームズ」「ガンロック」など日本独自のネーミングが特徴
・2025年現在、日本国内で正規のDVDやBlu-rayは未発売である
・過去のVHSやLDでの公式なコンプリート版発売も確認されていない
・海外では「Fantastic Four 1967」として全話収録DVDが流通している
・海外版DVDは英語音声のみで日本語吹き替えや字幕は未収録
・海外版DVDの多くは「非公式(ブートレグ)」の可能性が高い
・海外DVDの入手にはリージョンコード(通常リージョン1)の壁がある
・日本でのソフト化が困難な理由は日本語版マスター音源の所在不明と推測される
・動画配信サービス(Disney+など)でも現在、日本では配信されていない
・日本語版の最大の魅力は豪華で異色な声優陣にある
・ガンロック役(関敬六)の「ムッシュムラムラ」は流行語となった
・悪魔博士(南利明)や他の敵役にも人気コメディアンが多数起用された
「宇宙忍者ゴームズ」のDVD、特に日本語吹き替え版の入手は、残念ながら現在不可能に近い状況です。海外版DVDは存在しますが、それは私たちが愛した「宇宙忍者ゴームズ」とは異なる、オリジナルの「Fantastic Four」であり、品質にも懸念が残ります。
いつの日か、奇跡的に日本語版のマスター音源が発見され、あの豪華声優陣によるユニークな共演がDVDや配信で蘇ることを願うばかりです。
この記事が、「宇宙忍者ゴームズ」のDVDを探している方、そしてあの懐かしい作品の魅力に再び触れたいと考えている方にとって、現状を知るための一助となれば幸いです。

