月詠みのボーカルは『交代』じゃなかった|歴代ボーカルと「章ごとに替わる」仕組み

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ボカロPとして絶大な人気を誇るユリイ・カノンさんが主宰する音楽プロジェクト「月詠み」。文学的な歌詞世界と、疾走感あふれるピアノロックサウンドで多くのリスナーを惹きつけ続けています。その月詠みを聴いていると、ふと「あれ、ボーカルが変わった?」という疑問に突き当たることがありますよね。初期の楽曲と近年の楽曲を聴き比べると、声質も歌い方も明らかに違うからです。

私も同じところが気になって、公式の発表と各楽曲のクレジットを整理しました。先に結論です。

月詠みのボーカルは、確かに変わっています。ただし「脱退」や「不仲による解散」といったよくあるメンバーチェンジではなく、”章(Story)ごとにボーカルを替える”という、最初から設計された仕組みです。 月詠みは2021年にバンド形態からプロジェクト形態へ移行していて、ユリイ・カノンさんを唯一の固定メンバーとして、作品ごとに歌い手を編成しています。

ここでは、その「交代の正体」と歴代ボーカルの変遷、替わる理由、音楽性の変化、そして「声が違う」と感じる仕組みまで、順番に整理していきます。

結論|月詠みの「ボーカル交代」の正体

まず、いちばん大事なところを言い切ります。月詠みは、ユリイ・カノンさんが主宰し、唯一の固定メンバーとして作品ごとに制作メンバーを編成する音楽プロジェクトです。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲・編曲、そして物語の原案をユリイ・カノンさんが担当しています。

つまり月詠みの”中心”はあくまでユリイ・カノンさんで、ボーカルは「その章の物語を歌う担当」という位置づけです。一般的なバンドのように「メンバーが抜けて新しい人が入った」のではなく、章が変われば歌い手も変わる——これが月詠みの基本構造です。

転換点は2021年10月。それまでバンド形態だった月詠みが、公式サイトで「作品ごとに制作メンバーを編成するプロジェクト形態へ移行する」と発表しました。ここから、章ごとにボーカルが替わる現在のスタイルになっています。だから「ボーカルが変わった=なにかトラブルがあった」と身構える必要はありません。

歴代ボーカルの変遷

ここからは、章ごとにどのボーカルが歌ってきたのかを順番に見ていきます。

初代:mikoto(1st Story 第一章)

月詠みが活動を開始したのは2020年10月。このスタートを切った初代ボーカルが mikoto さんです。月詠みの第一章にあたる物語「欠けた心象、世のよすが」の楽曲を担当しました。

mikoto さんの歌声の特徴は、凛とした強さと、どこか儚さを感じさせる透明感です。ユリイ・カノンさんが作る、BPMが速く言葉数の多い難解な楽曲において、その滑舌の良さとリズム感は不可欠でした。デビュー曲「こんな命がなければ」や、大ヒットした「新世界から」では、絶望と微かな希望が入り混じる歌詞の世界観を、鋭くも美しい声で見事に表現しています。

感情を爆発させるというより、楽曲の物語を冷静かつ情熱的に「語り部」として届ける——そんな印象を残すボーカルでした。高音域の伸びやかさと低音域の安定感のバランスがよく、ピアノ主体の激しいバンドサウンドの中でも言葉の一つひとつがはっきり耳に届きます。この声が、月詠み初期のイメージを決定づけたと言っても過言ではありません。mikoto さんは第一章をもって、2021年に月詠みを離れています。

2代目:Yue(1st Story 第二章)

第二章からボーカルを引き継いだのが Yue(ユエ)さんです。第二章は2022年1月のデジタルシングル「生きるよすが」で開幕し、その楽曲は2nd mini album「月が満ちる」に結実しました。多くのリスナーが「ボーカルが変わった」と認識した最大のタイミングが、この第一章→第二章の切り替わりです。

Yue さんの歌声は、mikoto さんとはまた違う魅力を持っています。聴く者の心を揺さぶるエモーショナルな響きと、深みのある表現力。第二章の楽曲は、内面的な感情の揺らぎや登場人物の葛藤に焦点を当てたものが多く、その表現力豊かなボーカルが世界観にぴたりとはまりました。

たとえば「ヨダカ」や「生きるよすが」では、ウィスパーボイスのような繊細な歌い出しから、サビでの力強い歌唱まで、幅広いダイナミクスを駆使しています。感情を絞り出すような歌い方は、聴き手に強いカタルシスを与えます。Yue さんの起用によって、月詠みの音楽はよりドラマチックで物語性を帯びたものへと進化しました。

現体制:Juna & mido(THE BINARY・2nd Story)

そして2024年に開幕した 2nd Story「それを僕らは神様と呼ぶ」では、Juna さんと mido さんの2人がボーカルを務めています。2人はシンガーユニット THE BINARY としても活動しています。

ここで月詠みは初めて「2人ボーカル」体制になりました。公式インタビューでも、ユリイ・カノンさんは登場人物の人格に合う声を直感で選び、対照的でありながら、混ざったときに別のものが生まれる声質を意識した、という趣旨を語っています。対照的な2つの声を重ねて物語の登場人物それぞれの視点を歌い分ける、という新しいアプローチです。

ライブ参加:SERA

このほか、ライブでボーカルとして参加している SERA さんもいます。SERA さんは SALTY DOG のボーカルとしても活動しているシンガーで、月詠みでは音源の章ボーカルとは別に、ライブの場で歌声を届けています。

整理すると、音源のメインボーカルは「mikoto → Yue → Juna & mido」と章ごとに移ってきた、という流れです。

ボーカルが替わる理由|ユリイ・カノンが描く「物語」

なぜ月詠みは、これほど明確にボーカルを替えるのでしょうか。その答えは、主宰者ユリイ・カノンさんの作家性にあります。月詠みは、ただ良い音楽を届けるバンドではなく、小説や映像、音楽を融合させて「物語を表現するためのプロジェクト」です。

ユリイ・カノンさんは、章(ストーリー)ごとに異なる主人公やテーマを設定しています。第一章と第二章では、描かれる視点や感情の色合いが違う。だからこそ、その物語を最も適切に表現できる「声」を章ごとに選ぶ必要があったのです。アニメ作品でキャラクターごとに声優が変わるのと似た感覚、と考えるとイメージしやすいと思います。

つまりボーカルが替わったのは、前任者が不適合だったからでも、仲違いがあったからでもありません。「その章の物語を語るのに、最もふさわしい声が必要だったから」というクリエイティブな必然によるものです。ユリイ・カノンさんは、楽曲だけでなくボーカリストの声質そのものを「楽器」「演出の一部」として捉えています。この徹底したこだわりが、月詠みの世界観を強固にしているわけです。

「プロジェクト」だから替わる|バンドとの違い

ボーカル交代に違和感を覚える人がいるのは、月詠みを一般的な「バンド」のイメージで捉えてしまうからかもしれません。通常のバンドなら、ボーカル交代は存続の危機や音楽性の抜本的な変化を意味する一大事です。しかし月詠みは、自らを「プロジェクト」と定義しています。

この形式は、固定メンバーに縛られず、表現したい内容に合わせて柔軟に形態を変えることを可能にします。ボーカルだけでなく、映像クリエイターやイラストレーターも作品ごとに変わることがあります。この流動性こそが月詠みの強みで、常に新鮮な驚きを届けられる理由でもあります。リスナーは、ボーカルの交代を通じて、長編小説のページをめくるように新しい章の始まりを聴覚で体感できるのです。

ボーカル交代で音楽性はどう変わった?

ボーカルが変われば、生まれる音楽も変わります。月詠みの場合、それは単に声が変わった以上に、楽曲のアプローチやサウンドにも影響しています。

第1章と第2章の楽曲の違い

mikoto さんが担当した第一章と、Yue さんの第二章以降では、楽曲の質感に明確な違いがあります。

第一章の楽曲は、ユリイ・カノンさんのボカロPとしてのルーツを色濃く反映した、高速でテクニカルなピアノロックが中心でした。「死」や「絶望」という重いテーマを扱いながら、mikoto さんの鋭いボーカルで、どこか無機質で美しい、ガラス細工のような緊張感が漂っていました。

一方、Yue さんを迎えた第二章以降は、より「人間味」や「生々しい感情」が前面に出ます。ピアノの旋律は美しいまま、ギターの歪みやリズム隊のグルーヴが強調され、エモーショナルなロックへ接近しました。テンポを落としてじっくり聴かせるパートや、息遣いを感じさせるアレンジも増え、ボーカルの特性に合わせた楽曲制作が行われています。月詠みの音楽は「精巧な芸術品」から「心に寄り添う物語」へと、深みを増していきました。

ファンはどう受け止めた?

好きなプロジェクトのボーカルが替わるのは、ファンにとってセンシティブな出来事です。月詠みでも、当初は慣れ親しんだ声が聴けなくなる寂しさを感じた人もいました。

ただ、月詠みのファンはユリイ・カノンさんの描く「物語」そのものが好きな人も多く、交代の理由が物語の進行によるものだと伝わると、その変化を前向きに受け止める空気が広がりました。「新しい主人公にはどんな声が合うんだろう」と考察を楽しむ流れが生まれ、結果として表現の幅が広がったことで新たなファン層も獲得しています。今では、過去のボーカルも現在のボーカルも、どちらも月詠みに欠かせない存在として大切にされています。

よくある質問

Q. 今のボーカルは誰ですか?
2nd Story「それを僕らは神様と呼ぶ」では、THE BINARY としても活動する Juna さんと mido さんの2人がボーカルです。今後また新しい章に入れば、ボーカルが替わる可能性は十分あります。

Q. 初代の mikoto さんは今どうしているの?
mikoto さんは第一章をもって月詠みを離れています。その後の活動については公式に大きな発表が確認しづらく、現在の動向は断定できません。月詠み時代の楽曲は今も配信で聴けるので、初期の声を確かめたいときはそちらが手がかりになります。

Q. THE BINARY ってどんなユニット?
Juna さんと mido さんによるシンガーユニットです。月詠みの 2nd Story でボーカルを担当していて、2人ボーカルならではの掛け合いと声の重なりが、現体制の大きな特徴になっています。

Q. mikoto さん時代の曲はもう聴けない?
聴けます。「こんな命がなければ」「ネクロポリス」「新世界から」など第一章の楽曲は、配信やYouTubeで公開されています。歴代ボーカルの聴き比べをしたいなら、章ごとに代表曲を1曲ずつ並べて聴くと違いがよくわかります。

Q. これからもボーカルは替わっていくの?
プロジェクトという性質上、新しい章が始まれば新たなボーカルが登場する可能性は高いです。逆に言えば、次はどんな声が月詠みの世界を彩るのかを楽しみに待てる、ということでもあります。

まとめ

月詠みのボーカルについて、ポイントはこの通りです。

  • 月詠みはユリイ・カノンさんを唯一の固定メンバーとするプロジェクトで、章ごとにボーカルを替える設計(2021年にバンド形態から移行)
  • 歴代は mikoto(第一章)→ Yue(第二章)→ Juna & mido/THE BINARY(2nd Story)、ライブでは SERA さんも参加
  • 替わる理由は不仲や脱退ではなく、章=別の物語に合う声を選ぶという演出の一部
  • 音楽性も声に合わせて変化し、テクニカルなピアノロックから情緒的なロックへ幅を広げた
  • 「声が違う」と感じるのは正解で、交代に加えて楽曲の方向性の変化も重なっている

「ボーカルが変わった?」という疑問の正体は、月詠みというプロジェクトの作り方そのものでした。変わることを恐れず進化し続ける——そう思って聴き直すと、章ごとの声の違いが”物語の変わり目”に聞こえてきて、ちょっと得した気分になりますよ。

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